もうすぐで戦闘兵器に着地する、という距離で、ガチャリと嫌な音が響き渡った。

 戦闘兵器の両肩についたミサイル砲が、素早くエルに照準を合わせて来たのだ。機体の両足が地面を踏みしめる中、こちらを見据えたマルクが、操縦桿をしっかりと握りしめたのが見えた。

「……まじかよッ」

 エルは、慌てて銃をしまうと、自身の落下の軌道を反らせるべくコートを翻した。

 一発目のミサイルが放たれ、エルの身体の横を通過した。エルが地面へ降り立つまでに数発が乱射されたが、標的に着弾しなかったミサイル砲は、ビルの壁や地面へと向かい着弾した。

 数回の爆音と共に、砕かれたコンクリートが宙を舞った。

 エルの華奢な身体は、近くに着弾したミサイル砲の威力に耐えかねて、瓦礫と共に爆風で吹き飛ばされた。

 間近での発砲と爆音で、耳の奥が痛んだ。吹き飛ばされながら、エルはどうにか空中で身体を回転させ、両手両足で地面に着地して壁への衝突を免れた。

 舞い上がる土埃の中で、エルは素早く体勢を立て直した。

 戦闘兵器がこちらへ照準を正確に合わせる前に、エルは機体の足元目掛けて駆け出した。振り降ろされる戦闘兵器の腕をかいくぐると、機体の下に滑りこんで、素早くコンバットナイフを抜き取る。両手でナイフの柄を掴むと、思い切り機体の接合部から覗く電気ケーブルに突き刺し、左方向へ滑らせながら切断した。

 切断した電気ケーブルから、途端にオレンジ色の液体が噴き出し、エルは嫌な匂いに顔を顰めた。しかし、雑念を頭から振り払い、切るよりも潰す方が早いと判断して、すぐさまコンバットナイフを歯で噛んで固定し、両手を自由にした。