『お願い、あの子達を助けてあげて。きっと、あなたになら出来るから』

 声が言い終わるよりも早く、セイジは、アリスを強く抱きしめ窓の外へと飛び出していた。

 かなり高さがあるが、きっと大丈夫だろう。宙に躍り出てすぐに、セイジは着地に備えて両足を突き出した。

「『助けてあげて』、だって? 当然だろう! 仲間なんだから!」

 セイジがそう叫び返した時、地上を走っていたログが、その声に気付いて足を止めた。

 こちらを仰ぎ見たログは、途端に顔を強張らせると、「おまッ、なんてところから登場するんだよ!」と口を開いた。

 ログが足を止めた場所は、セイジの着地予定地点だった。セイジは、アリスを抱き締める腕に力を込めると、調整が効かないからそこをどいて欲しい、とログに向かって声を張り上げた。

 踵を返したログが「バカヤロー!」と捨て台詞を吐いた直後、セイジの身体が着地し、その衝撃で地面が大きくめり込んだ。

 衝撃の風圧で瓦礫の一部が飛び、逃げ遅れたログもひっくり返った。

          ◆◆◆
 
 意識が戻ったクロシマが紙袋に咳込み、セイジがまだアリスと合流する前、暗闇と化したビルの非常階段で一回目に階段を踏み外し掛けた頃――

 エルは、怪物と化した対地上用戦闘機MR6との戦闘を開始していた。

 様々な色の電気ケーブルが筋肉のように巻き付いた機械の腕は、軽々とコンクリートを叩き割る程に強靭だった。そんなものに潰されたら冗談では済まされない、エルはそう考えつつ、戦闘兵器から繰り出される攻撃を避け続けていた。