到着したビルの七階は、ベージュのマットが敷かれただけの、椅子もテーブルもない開けたオフィス・フロアが広がっていた。硝子や瓦礫の欠片が少し転がっていたものの、壁は真新しく、寂しいほど伽藍とした空間が開けている。

 七階のフロアに踏み入ってすぐ、セイジは、空間の中央に横たわる一人の少女の姿に気付いた。マルクに連れ出された時と同じく、袖の短いレースの付いたついた上着と、たっぷりのフリルが特徴の桃色のスカート、丸みのある黒いブーツを着用したアリスだった。

 アリスは、床にウェーブを描くブロンドの髪を広げ、胸の上で手を組んだまま眠っていた。

 心音や呼吸を確認したところ、異常はなく怪我もしていないようだ。しかし、セイジが彼女を起こそうと名前を呼びかけても、大丈夫かと頬に触れても、まるで起きる気配はなかった。

『まだ、目覚めの時ではないわ。大丈夫、もう少しで目を覚ますはずだから……』

 先程とは違う、柔らかい女性の声が部屋に響いた。

 セイジは警戒し、素早く辺りを見回した。人の姿は確認出来なかったが、彼は念の為アリスを抱きかかえると、警戒しつつも尋ねた。