「生憎、俺は軍人じゃないよ。アリスを助け出して、お前をぶっとばして、エリスを止めに行くんだ」
エルが挑発するように答えると、マルクの顔色が変わった。彼は奥歯を噛みしめると、卑屈そうに口角を引き上げた。
「止める……? 何を馬鹿な事を。エリスは生きている。お前は『彼女』をみすみす殺してしまうつもりなのか」
戦闘兵器に巻き付いていた電気ケーブルが、筋肉のように膨れ上がった。増幅されたアームが軋みを上げて持ち上がる。
もはやそれは、装甲された機械ではなく、鼓動する一つの生き物の腕のように見えた。電気ケーブルの一つ一つが血管のように脈打ち、マルクの怒りに呼応してうねるっているのが見て取れた。
ああ、狂気に溺れてしまった眼だ。
エルは、何者も映さないマルクのサファイヤの瞳が、憎き敵を見据えている今の状況を思って息を呑んだ。
今の彼は正気じゃない。誰の言葉も理解しないだろう。
エルは、マルクを見据えたまま、ボストンバッグをそっと地面に降ろした。ボストンバックの中に入っていたクロエが、殺気を感じて背中の毛を立てながら素早く抜け出し、エルに一つ肯くと、バッグの端を咥え、軽々とした足並みで建物の影に消えていった。
エルが挑発するように答えると、マルクの顔色が変わった。彼は奥歯を噛みしめると、卑屈そうに口角を引き上げた。
「止める……? 何を馬鹿な事を。エリスは生きている。お前は『彼女』をみすみす殺してしまうつもりなのか」
戦闘兵器に巻き付いていた電気ケーブルが、筋肉のように膨れ上がった。増幅されたアームが軋みを上げて持ち上がる。
もはやそれは、装甲された機械ではなく、鼓動する一つの生き物の腕のように見えた。電気ケーブルの一つ一つが血管のように脈打ち、マルクの怒りに呼応してうねるっているのが見て取れた。
ああ、狂気に溺れてしまった眼だ。
エルは、何者も映さないマルクのサファイヤの瞳が、憎き敵を見据えている今の状況を思って息を呑んだ。
今の彼は正気じゃない。誰の言葉も理解しないだろう。
エルは、マルクを見据えたまま、ボストンバッグをそっと地面に降ろした。ボストンバックの中に入っていたクロエが、殺気を感じて背中の毛を立てながら素早く抜け出し、エルに一つ肯くと、バッグの端を咥え、軽々とした足並みで建物の影に消えていった。