「プログラムの制御奪還とか、出力値だとか難しい事はよく分からないけど、ここから皆を脱出させる為に協力して欲しい。俺も、きっと皆を助けられるように頑張るよ」

 長らく話しを聞いていた男が、ふと、危うげな足取りで腰を上げた。

(突然の事で混乱しちまってるんですが、――まぁ、それはいいか。暴走を出来るだけ最小限にとどめて、脱出に関わるシステムに関しては全て奪還する、通信手段はないにしても、あの怪しい『ナイトメア』が俺らのサポートに回って、そっちで手筈を整えるって訳ですよね? 多分、その原理からいくと、アリスの件も併せてどうにかなりそうですが……君は?)

 唐突に幽霊が声を発した事について、エルが驚いていると、男が煙で曇った頭をかきながら言葉を続けた。

(あ~……恐らく、君が報告にあった『エル君』って少年ですかね。俺の見解、間違ってますか?)
「いや、間違ってはいないけど……お前、喋れたんだなぁと思って?」
(その件に関しては、俺もびっくりしてます。さっきまで声が出ませんでしたもん)

 軽い口調でそう言ってのけた幽霊のような男が、ぼんやりと笑ったような気がした。