「訊きたい事があるんだ。ちょっと待ってて」

 エルは、再度クロエがボストンバッグに顔を引っ込めた事を確認すると、バッグのチェックをしっかりと締めた。戦闘兵器の埋め込み式銃口が、こちらに向けられた事に気付いて、すぐに戦闘態勢に入り地面を蹴り上げる。

 エルは、戦闘兵器との間合いを一気に詰めた。こちらに向けられた戦闘兵器の腕に膝を入れて衝撃を与えると、続いて腰からコンバットナイフを引き抜き、戦闘兵器の手部分に搭載されている埋め込み式銃口を素早く切り落とした。

 スウェンから預かったナイフは、物凄く切れ味が良かった。エルとしても、まさか骨を断つつもりで使ったところ、鉄性が簡単に切れてしまうとは思ってもいなかったから、自分でやっておいて少し目を丸くしてした。

 指先の武器を失った戦闘兵器は、予想外の攻撃にバランスを失ったが、崩れ落ちる直前に、右足で自身の身体を支えて踏みとどまった。

 戦闘兵器は動き出そうとしたが、右腕が使い物にならなくなった事を悟ったらしい。エルの一回目の攻撃で腕の自由を失った事により、ただの動かぬ重い鉄と化した右腕が邪魔だと悟ると、自分の左腕でそれをもぎ取ってしまった。

 エルは、地面への着地と同時にコンバットナイフをしまうと、素早く右手に銃を持ちロックを解除しながら、戦闘兵器に判断の暇を与えないようその両足部分へ回りこんだ。そして、足の根元の接合部分から覗く電気ケーブル目掛けて、全身の力を使って足技を叩き入れた。

 電気ケーブルの一部を潰され、右足への動力供給が不能となった戦闘兵器が、足元にいたエル目掛けて左腕を振り降ろした。

 エルは、降り降ろされた左腕を避けて後退すると、地面を蹴り上げた反動を活かし大きく跳躍し、戦闘兵器の頭部に降り立った。そのまま戦闘兵器の穿った空洞に銃口を突き入れると、中心部目掛けて、一発ずつ引き金を引いた。

 数秒も関わらず、戦闘兵器の動力が落ちた。兵器の中からショート音が上がり、穿った穴に輝いていた赤い光りが消える。

 稼働力を失った戦闘兵器は、地響きを立てながら地面に崩れ落ちた。