『既に、『彼女』は覚醒しつつありますので、時間がない事には変わりありません。貴女は一先ず、街の中心にある塔を目指して下さい。プログラムの破壊が完了し、全ての人間をこの世界から追い出せたら、後は私達の出番です』
「わかった。俺は塔に向かう。その途中に、俺にも出来る事があればやっておくから」

 約束を果たす為には、やっておかなければならない事が多くあるようだ。

 時間が迫る中で、恐らくは、スウェン、ログ、セイジ、ホテルマン、エルが、それぞれの状況に応じて、一つでも多くの事をこなせるかが鍵となるのかもしれない。

『そうですね。予定が狂い、役者が一人でも欠けてしまう事態を回避するためにも、彼らには頑張ってもらわねばなりません』
「お前、俺の思考が読めるの? ……まぁ、別にいいけどさ。とりあえず俺達は、まずスウェン達の任務に協力して、アリスの救出と、プログラムの破壊を出来るだけ早く終わらせればいいって事だよね」
『左様でございます。取り込まれた精神体の件については、外の人間を使います。私の方で手筈は整えますので、ご安心を』

 エルは、決意を改めるように「うん」と深く肯いた。