『私はその名前で『夢人』としての形を作って力を制限し、こちら側で動けるよう手筈を整えられているのです』
「ふうん、そんなものなのか」
『あまり動揺はされていないようですね。貴方様がやるべき事を、思い出されましたか?』

 エルは、短く息を吐いた。

「やるべき事は思い出せたよ。『お姉さん』を見付ければいいんだね?」
『その前に、人間が造ったプログラムを完全に破壊する事と、現在こちらに入り込んでいる人間を元の世界に戻す必要があります。人間が造り持ち込んだ物に関しては、物質世界の者でしか破壊する事が出来ないので、そちらは『愛想のない大きなお客様』に行って頂くしかありませんね』

 愛想のない、と口の中で反芻し、エルはログの顔を思い浮かべた。

 そういえば、ホテルマンはいつも彼の事をそう呼んでいたな、と思い出した。確かスウェンの事は『親切なお客様』で、セイジの事は『大きなお客様』、エルの事は『小さいお客様』だったはずだ。

 ……面倒にならないのかな、その呼び方。

 エルは不思議に思ったが、気持ちを切り替えて質問した。