「だから、喰わない努力をしている、と言ったのです。この感覚をどういうのか『私』には分かりませんが、彼女は私を視認すら出来ないのに、私は彼女の怖い事、痛い事、苦しい事を取り除ければいいのにと、そんな事ばかり考えてしまう」
オジサンは「そんな気はしてた」とぼやいた。『彼』は、何も尋ねなかった。
日々は、慌ただしくも穏やかに過ぎ去っていった。『彼』は、滅多な事がない限り表に出なくなった。根付く際の発動で、古い過去の大半を喰われてしまった不安定な少女の中から、静かに見守り続けた。
――大丈夫。必要のない物なら、私が食べてさし上げましょう。
悪夢から逃げ惑う幼いエルの目を隠し、悪夢を喰らい続ける。けれど『裏の子』ではないから、悪夢を喰っても『彼』の腹が満たされる事はない。
場面は、次々に移り変わった。包丁も持てなかった少女は、台所に踏み台を置いて手伝えるまでになった。
子供の成長は早かった。訓練に身体が慣れ始めると、滅多な事じゃ泣かなくなった。彼女は人の為に怒り、小さな生き物を大切に想い、よく笑うようにもなっていった。
オジサンは「そんな気はしてた」とぼやいた。『彼』は、何も尋ねなかった。
日々は、慌ただしくも穏やかに過ぎ去っていった。『彼』は、滅多な事がない限り表に出なくなった。根付く際の発動で、古い過去の大半を喰われてしまった不安定な少女の中から、静かに見守り続けた。
――大丈夫。必要のない物なら、私が食べてさし上げましょう。
悪夢から逃げ惑う幼いエルの目を隠し、悪夢を喰らい続ける。けれど『裏の子』ではないから、悪夢を喰っても『彼』の腹が満たされる事はない。
場面は、次々に移り変わった。包丁も持てなかった少女は、台所に踏み台を置いて手伝えるまでになった。
子供の成長は早かった。訓練に身体が慣れ始めると、滅多な事じゃ泣かなくなった。彼女は人の為に怒り、小さな生き物を大切に想い、よく笑うようにもなっていった。