しばらく、二人と、二匹と、そして『彼』が一つ屋根の下で暮らす生活が続いた。エルの知らない思い出も含めた日々が、どんどん過ぎ去ってゆく。

 まだ彼女の身体が鍛えられていなかった頃、体術戦で『彼』が突然、エルと入れ変わる事があった。不意打ちで頭を叩かれたオジサンが、悔しそう顔をして、大人げない言葉を口にした。

「だから、お前が出て来ちゃ意味がねぇだろッ」
「この身体には、まだ無理のある戦闘だと判断しました」
「くっそぉ、ころころ入れ替わりやがって。エルだと思って警戒していなかったから、俺が負けちまっただろうがぃ」
「問題ない。私の動きは、全て彼女の経験として、この身に学習されます」

 更に移り変わり流れていく風景の中で、『彼』の時間だけが徐々に削られていくのが分かった。

 幼いエルが、怖い夢に怯えて外に飛び出した日の夜の後、『彼』とオジサンは、久しぶりに月明かりの畑道を散歩した。市街地の灯りよりも美しく照らし出された、青白い月夜の世界を、ポタロウとクロエが先頭を切って歩いていた。