二人の間に、再び沈黙が下りた。

 オジサンが、仕方ないといわんばかりに西瓜を一つ頬張った。

「しょうがない、お前が食え。せっかくもらった西瓜だからな。有り難く食わないと罰があたっちまうぞ」
「この世界の『神』とやらにですか?」
「そうだ。日本にはな、八百万の神様がいるんだぞ。凄いだろう。ちなみに、この西瓜をくれた婆さんの畑の辺りにも、神様の祠があるぜ」
「ふむ。それは大変だ」
「そうだろう。だから、食え」

 オジサンは、いつも一方的だ。昔からそうだが、彼は自分の理論で無理やり話を押し通してしまう天才だった。強引で、世話好きで、よく笑う人。首にはいつも、チェーンに通した結婚指輪を大事に提げていた。

 風景が変わり、夢の中の時間軸が過ぎていった。傷だらけの女の子は傷跡すら消えて、大半の時間を、エル自身の意識が占めるようになる。しかし、病気にも痛みにも弱い小さな身体の負担を受けるように、時折『彼』が出て来て、オジサンと過ごした。