僕は悪態なんて吐く柄じゃないのにと思いつつ、この時ばかりは、舌打ちを十八番とするログに共感出来た。スウェンは「畜生め」と頭を抱えたが、時間がない事実に思考を切り替えて、ホテルマンを見つめ返した。

「セイジもログも、中心にある塔を目指すだろう。ひとまず君には、僕をエル君のところまで案内してもらう」

 そう言って睨み付けたが、ホテルマンは嘘臭い営業スマイルを浮かべただけで、反論も助言も意見もしなかった。

 いつも重要な点をはぐらかされているような気がする。それでいて、ほとんど嘘は口にしないのだから、多くの情報とキーワードばかりが散りばめられるのだ。スウェンにとっては、一番厄介な相手だった。

 スウェンが諦めたように肩を落とし、改めて道案内を頼むと、ホテルマンは少し間を置いた後、僅かに申し訳ない程度に口角を引き上げて、「さぁ、参りましょうか」と礼儀正しく告げた。