「ファンタジーみたいな『夢人』という存在に関しては、そのまま受け入れる事にするよ。――それで?」
「『夢人』は、『裏の子』であろうと創造を司る領域の存在に分類されております。彼らは結局のところ『心』から産み落とされた存在であり、個々がある。――簡単にざっくりと申しますと、創造もなかった始まりの闇に、一つの意思が生まれて『裏の子』の領域の底を統べるようになった。その闇の根源が『私』という存在なのです」
「……さっきの能力を見た事も含めると、君は『夢人』以上に厄介な存在、という事でいいのかな」

 さあて、どうでしょうかねぇ、とホテルマンは作り物の顔で呟いた。

 唯一『理』によって創造されなかった、『理』と共に始まりからいた古き存在の化身であるが、何も無い場所から生まれ留まる自分には、他者からの客観的な間奏印象を考えた事もないので、とホテルマンは説く。

「私も『夢人』と同様に、縛りがありますからねぇ。――いいえ、恐らく『夢人』以上に不自由でしょうね。大き過ぎる力の発動には条件があり、『夢人』とは違い、それに見合った分のエネルギーも要る。こちら側に入る際にも、この世界のルールに従って形を用意し、あらゆる者を食べつくさないよう『力』を制限しなければならなかったのです」

 そこで、ホテルマンは言葉を切ると、スウェンを見据えて口角を薄らと引き上げた。

 あちら側の世界の情報開示、または交換にも条件があるのだろうか。そう勘繰りつつも、スウェンは、自分が導き出した答えを絞り出す事にした。