スウェンは、ホテルマンの顔色を探った。思考も全て把握してしまえるらしいホテルマンは、こちらに顔を向けて静かに待っている。珍しく、どこか困ったように微笑む胡散臭い表情からは、考えを読み取る事は出来なかった。

 試されているのだろうか、とスウェンは悩んだ。

 恐らく、こちらの回答を待っているのだろう。スウェンはそう判断すると、自身の憶測を語ってみる事にした。

「僕は君達の事情や立場は上手く分からないけれど、君はログに答えたように『夢人』という存在ではなく、この世界で生きる『何か』なんだろう。僕の考えが正しいとするならば、君は今『夢人』のように行動出来るけれど、目立った行動は起こしてはならないという、何かしらの制限も持っている――ここまでは、だいたい合っているかな?」
「上出来で御座います、『親切なお客様』」

 ホテルマンが、ほくそ笑んだ。

 ホテルマンの嘲笑するような笑みを見て、スウェンは自分の回答が彼の期待通りだったと、ひとまずは安堵に胸を尾と付けた。

 さあ、ようやく答えらしい事が聞けるようだ、とスウェンはホテルマンに耳を傾けた。

「簡単に言ってしまえば、『夢人』と『私』は、反対の存在であると認識された方がよろしいでしょう。まずは『夢人』ですが、創造を担う存在が『夢守』や『表の子』と呼ばれ、創造された質量分の闇を受け持つ存在が『裏の子』と呼ばれています。それらは全て『理』から生み出された役者で、全て『夢人』と称される存在です」

 けれど、それ以上の詳細は必要ないでしょう、とホテルマンが営業用の笑顔を浮かべた。

 スウェンとしても、今必要な情報だけが欲しかった。それらがどういう理屈で存在し、何をしているのかという説明よりも、今関わっているホテルマンの正体が知りたいのだ。何故なら、スウェンの推理では、彼がエルと深く結び付いているからだ。