軍事演習場として、試験運用されていたという都市型の仮想空間は、きちんと区画整理をされ管理されている場所だった。

 地形は平坦で、中心地から大きな十字の大道路が敷かれており、そこから五目状に細い道が縦横に分岐されている。街路樹や電灯、大型ショッピングセンターや高層ビル群、中心区域はAからDまでの四つに区分されている。

 そのはずだったが、スウェンは、実際に『仮想空間エリス』に降り立って驚いた。

 資料で見聞きした『仮想空間エリス』の印象と違い、そこは随分と荒廃が進んでしまっていた。敷かれたアスファルトには亀裂が入り、建物は災害に見舞われたように傷み、窓やパイプ管の破損も目立った。道路には、破壊されたように横転した車が転がっており、頭上には厚い雲が渦を描いて立ち込めている。

 電気の稼働は、全て止まっているようだった。

 状況は、あまりよろしくなかった。どうやら、全員がばらばらの地点に降り立ったらしい。

 しかし悩む暇もなく、スウェンの眼前で、唐突に一人の女性が胸を貫かれて崩れ落ちた。

 目の前で殺害された女性は、白衣を着用しており、鎖で勢いよく貫かれた身体からは出血がなかった。女性は目を見開いたまま事切れると、そのまま白く燃え尽きるように消えていった。

 突然過ぎて詳細を確認するには至らなかったが、スウェンは、エキストラらしい登場人物を殺した物の蠢く気配を覚え、咄嗟に身を隠して様子を窺った。

 建物の影から出て来たのは、対地上用戦闘機MR6だった。新兵器のとして開発と構想が続けられている、戦闘員搭乗用のモデル兵器シリーズである。