「あのね、君達の世界の常識ではどうかは知らないけれど、人間の場合、予想や確率で推測立てをしたとしても、起こり得た身近な結果を材料に、常々変動するもので……だけど、そうだね」

 強く反論しようとしたスウェンは、人ではないホテルマンに、その件で張り合うのも何だか馬鹿らしく思えて、言葉を途切らせた。全部お見通しであるのなら、見栄を張る必要もないのだろうと、彼の頭脳はそう答えを出してしまう。

 それを察しているのか、ホテルマンも話を遮ろうとする様子はない。だから、スウェンは、想いのままに自分の本音を口にこぼしてみた。

「……気付いた時には、僕のペースが、すっかり乱されていたんだ。きっと、それだけの事なんだとは思うのだけれど…………多分、もう離れ難いのかもしれないなぁ」

 スウェンは、遠く向こうへと目を向けながら、無意識に組み合わせた指を動かせた。

 黙って話を聞いていたログが、「お前らの話は小難しいな」と背もたれから身を起こした。