「『親切なお客様』、貴方様は利口で賢い方だ。周りの人間から恐れられ、怨まれようが、貴方様は部下を守り、多くの他者を犠牲に戦場を勝ち抜ける頭脳と、強い心を持った素晴らしい指揮官です。戦地に置いては、余計な心配事は抱え込まない方が懸命である事は、貴方様が一番ご存知のはずでしょう」

 何故知っているのだ、とスウェンは殺気を向けた。

 普通の人間であれば気圧される視線をあてられても、ホテルマンは眉一つ動かさず、淡々と言葉を続けた。ログとセイジは、隊長であるスウェンのやりとりを邪魔しないよう待機していたが、僅かな変化も見逃さないよう、ホテルマンの横顔を見据えていた。

「彼女だって、そうなのです。あの子は、本物の戦場は知らなくとも、その余計な考えが戦いにおいては不利になる事を知っている。暗黙の間に、貴方達はお互いが、それを了承されていたはずでは?」

 そこで、ホテルマンが確認するように、くるりと首だけでスウェンを振り返った。