些細な事だって構いやしないのだ。

 例えば、エルが「雨が降りそうだ」と言えば、こちらは「そうかもしれないね」と、人の言葉で応えてあげられる。セイジなら、風の中に含まれる湿度に鼻をきかせ、経験から別の言葉を引き出すかもしれない。ログならきっと、動物的な勘で、自分が判断した結果を口にするだろう。

「別れが待っている確率が大きいと仮定したとしても、今、貴方様が口にした願いは、変わらないでしょうか」

 不意に、ホテルマンが言葉を紡いだ。

 スウェンは、ざわりと胸騒ぎを覚え、ホテルマンの横顔を睨み付け、考えるまでもなく「どういう意味だい?」と威嚇のような声を上げていた。

 別れという言葉を聞いて冷静でいられず、スウェンは思わず、普段の猫を破り捨てて高圧的に低く問い掛けた。

「それは、どういう意味かな?」

 声にハッキリと棘を含ませたが、ホテルマンは、相変わらず涼しげな横顔でエルの方を見つめていた。