「私達は先程、『仮想空間エリス』の心臓である『エリス・プログラム』の干渉を受けました。あれはバグのようなものですから、恐らく、復旧までには、しばらく時間がかかるかと思われます」
「通信システムに障害が起こるという事かい?」

 スウェンは立ち上がり、苦労損の顔を、ホテルマンに向けた。

「はぁ、私は『機械』とやらには詳しくはないので、なんとも言えないのですが……そうですねぇ、大きな干渉は、巨大なエネルギーのうねりです。簡単に例えると、圧縮されたエネルギーが、瞬間的に爆発するようなものです。通信とやらにも、支障をきたす可能性はあります」

 オジサンの家には、ほとんど近代機器がなかったが、無知なエルにもエネルギーの爆発だと言われれば、何かしら生涯が怒るだろうとは理解出来た。

 説明を聞いたスウェンも、「なるほど、仕方がないね」と交信を諦めたように肩を落とした。

「僕は何だか胸騒ぎがしてね。気のせいならいいのだけれど、ここに来て『夢人』やら色々とあったじゃないか。それで、もしかしたら、ラボでも何か起こっていやしないかと……」
「あいつらは俺達の身体みてるだけだろ。どうって事ないさ。そんなファンタジーな事が、現実で起こる確率なんて早々ないだろ」

 ログがそう答えたが、スウェンは悩ましげに沈黙し、セイジは自信なさそうに二人の様子を見守っていた。