白いコンクリートの室内は、大型トラック五台分程のスペースがあった。機器から伸びる電気ケーブルは床を埋めるほどの量ではなく、四方の壁に向かって太いコードが四本と、そこに、いくつかの細い電気ケーブルが絡み合い連なっているだけの、シンプルなものだった。

 初めて支柱を見た時の衝撃に比べると、ずいぶんと閑散した機械設備のように感じた。利口な機械が、少ない設備の中できちんと動いているような印象を受ける。

 ここからは、ログとスウェンの仕事だ。

 何が出来る訳でもないエルは、壁に背を預けて様子を見守る事にした。ホテルマンは中には入らず、こちらに背を向けて、開け放たれたままの扉の段差に腰を下ろしていた。

 クロエは、一度室内の様子を見届けた後にすぐ、ボストンバッグの中で丸くなって眠りについてしまっていた。ログとスウェンの行動を見守るセイジが、所在なくエルを振り返り、ぎこちない笑みを浮かべて見せたので、エルも、ぎこちなく笑い返した。

 その時、彼らに背を向けるように座り込んでいたホテルマンが、ふっと嘲笑を浮かべた。


「人間は、くだらない物を作りますね」


 機械の稼働音があるにも関わらず、その声は、やけにはっきりと耳に滑りこんで来た。ログが「何が言いたい」と、室内から大きな声を投げかけたが、ホテルマンは背中越しに肩をすくめ、ちらりと横目でスウェンの様子を見ただけだった。

 エルも、スウェンへ視線を向けた。彼は支柱の前で何やら機械をいじっていたが、その表情は曇っていた。彼は何度かスピーカーを軽く叩き、首を捻っている。

「外とは繋がらないと思いますよ、『親切なお客様』」

 ホテルマンが途端に、どちらともつかない困り顔を作って、そう言った。