しばらく何も無い土地を歩いた。大地を踏みしめるごとに、靴底で砂利が擦れて音を立てた。後方の森はどんどん遠ざかり、追って来る巨人の気配もなかった。

「『仮想空間エリス』に到着次第、まずはアリスを救出する。脱出口が用意されているかも確認して、それからプログラムの破壊し、脱出しよう」

 歩きながら、スウェンが考えを口にした。

 スウェンの後方で、ログが大きな欠伸を一つした。ボストンバッグの中から顔を出したクロエも、守を離れられ手緊張感が解けたのか、つられて欠伸をこぼした。

「一体どんなところなんだろうね」
「さぁ、今はどんな風になっているのか」

 エルの質問に対して、スウェンは首を傾けて言葉を続けた。

「僕が聞いた話では、美しい都市だったらしいよ。軍事演習用としての街並みが再現されていたものだけど、二本のアニメみたいな近代的な街並みで、すごくキレイだったんだって」

 とはいえ、多くの人間を犠牲にした今の『仮想空間エリス』が、どのようになっているのかは未知数だ。アリスを救出した後、プログラムがある場所まで向かい、ログがそれを破壊する。それがスウェンの筋書きらしい。