「『大いなる意思』は、完璧さを求める故に規律が厳しい。『理』を修正する為なら何でもやってのける。『器』は複数用意されていたが、私が『この子』を選んだ、それだけだ」
「ふうん。何故こいつと決めた?」
「分からない。『私』は生命の心から生まれない――『私』は育み、守る役目は一切負わされない。だが自分に用意された『器』だけは、生まれながらに見分けられる」
「難しい言葉で言われても、俺にはちっとも分からんぞ。じゃあ最近のお前は何で、面白くなさそうな顔して、眉間に皺を寄せてんだ? 俺にはな、納得出来ない事でもあるんじゃねぇかと、そう思えてならないんだがな」
すると、『彼』は肯定するように声を落とした。
「……どうしたら、彼女が泣きやんでくれるのだろうかと、この頃ずっと考えている。何故、私がそんな事を考えているのだろうと、そう考えている。私の目には、人の世は、あまりにも不透明で不明瞭すぎて、――眩しい」
私たちの出会いは、悪夢のような状況下だった。思い出すたびに私は震え上がり、踏み込んでしまった未知の領域に悔いる。
けれど、それでも私は、私の可愛い友人だった、あの頃の『ナイトメア』を忘れられないでいた。不器用で、恥ずかしがり屋で、小さな頑張り屋。きっと『彼』なら、女の子にひどい事はしないような気がしていた。
こんな事を言っては、また友人に「だからお前は甘い」と怒られてしまうだろう。
それでも私は、いつも私を見送り出してくれる友人と『彼』の姿を見るたび、彼らが一緒になって、この子を守り導いてくれる未来を強く予感した。
「ふうん。何故こいつと決めた?」
「分からない。『私』は生命の心から生まれない――『私』は育み、守る役目は一切負わされない。だが自分に用意された『器』だけは、生まれながらに見分けられる」
「難しい言葉で言われても、俺にはちっとも分からんぞ。じゃあ最近のお前は何で、面白くなさそうな顔して、眉間に皺を寄せてんだ? 俺にはな、納得出来ない事でもあるんじゃねぇかと、そう思えてならないんだがな」
すると、『彼』は肯定するように声を落とした。
「……どうしたら、彼女が泣きやんでくれるのだろうかと、この頃ずっと考えている。何故、私がそんな事を考えているのだろうと、そう考えている。私の目には、人の世は、あまりにも不透明で不明瞭すぎて、――眩しい」
私たちの出会いは、悪夢のような状況下だった。思い出すたびに私は震え上がり、踏み込んでしまった未知の領域に悔いる。
けれど、それでも私は、私の可愛い友人だった、あの頃の『ナイトメア』を忘れられないでいた。不器用で、恥ずかしがり屋で、小さな頑張り屋。きっと『彼』なら、女の子にひどい事はしないような気がしていた。
こんな事を言っては、また友人に「だからお前は甘い」と怒られてしまうだろう。
それでも私は、いつも私を見送り出してくれる友人と『彼』の姿を見るたび、彼らが一緒になって、この子を守り導いてくれる未来を強く予感した。