「あの子はな、夜中に突然飛び起きる事がある。親を呼んで泣き出すんだ。まるで世界が終わっちまったみたいな、ひどい泣き声だよ。――お前と『あいつ』は、自分達の都合だけであの子を生かしたんだ。俺は、それが許せないと思う事がある」

 心因性の疾患だろう、と私は報告を聞くたび気が重くなった。命を弄んでいるのかと友人に殴り飛ばされ事もあるが、全くその通りだと思う。

 人体実験はもう行わないと誓って、昔この友人と別れたにも関わらず、私は運び込まれた彼女の身体を、結果的には、未知の領域のモノ共へ明け渡してしまったのだ。

 私が手を出してしまった事が、まさか一組の親子元に、『器』となるべき一人の人間の子共を用意するなど、私の理解力をとうに超えていた。『彼』の説明には、さすがの友人も頭を捻っていた。

 受け入れられる『器』の条件について聞かされた内容は、我々の知る常識では、到底理解出来るものではなかった。