「おいおい納得するなよ、若き所長さんよ。つか、お前、それを『知らない』っていうんだろうが。あんまりガキみてぇな事抜かしてると、ますます阿呆に見えるぞ」
「黙れ。私は、お前が嫌いだ」
「口を慎め、ここでは俺がリーダーだ。口の聞き方には気をつけろ。俺も、お前が嫌いだ」
「ちょッ、二人とも止めて下さい、彼女の身体に障ってしまうッ。あなたは連れて来た初日に、せっかく再生した筋肉組織を破裂させていた前科があるじゃないか」

　慌てて私が止めに入ると、その子供が赤い目を細めた。

「破れて潰れてしまった組織の再生には、当然時間がかかる。人間とは愚かな生き物だ」
「ちぇッ、お前がきちんと説明しなかったのが悪いだろ。俺ぁ、何も悪くないぞ」

　問題は山積みだった。上手くいったとはいえ、結果的に、私は一人の女の子の人生を巻き込んでしまったのだ。

　何も起こらなければ普通の人生を送れるだろうが、そんな保証は、どこにもなかった。