少しの休憩を挟んだ後、一同はホテルマンの後について歩き出した。

 車ほど大きな巨木の根や幹を踏み越え、エル達は森の終わりを目指した。

 スウェンに答えた後、やる気が萎えたホテルマンの後ろ姿に、ログが苛立ちとストレスをぶつけると、彼は珍妙な表情でこちらを振り返り、その原因について告げた。

「だって、疲れてしまったのです。仕方がないのです」

 ホテルマンは、唇に指を当てる仕草をした。その様子を見たスウェンが、悪寒と鳥肌が止まらない様子で「可愛くない全然可愛くないッ」と身震いし、ログが「このタイミングでやられると、マジで殺したくなるな」と殺気立った。

 ホテルマンがしっかり守っていてくれた事もあり、無傷だったクロエは、エルと再会出来てからというもの、エルの腕に抱かれたまま飽きずに顔をすり寄せていた。エルがすっかり毛だらけになった頃、ようやく納得したようにボストンバッグに戻った。

 歩き通す両足には、時間の経過と共に疲労が蓄積した。夜風は冷えるとはいえ、肌の上には汗が滲む。

 夜が終わってしまう前に森を抜けなければならない、という意識もあって、休まず歩き続ける中で、次第に交わされる言葉数が減った。ホテルマンは度々、全員が後ろをついて来ているか確認したが、珍しく声も掛けなかった。

 木々の向こうから、僅かな光りが差しこむ場所が目に止まり、森の終わりが見えた。

 もう陽が昇るのだろうか。この世界の夜が終わってしまったら、生物を食う木々も活動を再開してしまう。そんな思いで自然と気持ちが急かされ、エルの前進する足にも、知らず力が入った。

 木々の向こうが、白い――

 エルは力を振り絞り、最後の大きな木の根を踏み越えた。