この世界は、もうすぐで完全に閉ざされてしまうだろう。

 その前に、彼らを外の世界へ返さなければならない。エルには、この身と引き換えにやらなければならない事がある。――けれど、きっと彼らは大丈夫だろうとも思えるのだ。帰るべき身体が、彼らを引き寄せてくれるはずだから。

 エルが気がかりなのは、クロエの事だった。

 最期まで側にいて欲しいと彼女に言いながら、エルは結局、彼女を置いて、先に一人で逝こうとしているのだから。

              ※※※

 ログに引っ張られて外に出ると、そこには夜が広がっていた。

 巨木の根が、眠り落ちた竜のように大地を埋め尽くしていた。荒れ狂った後に、そのまま動きを止めてしまったような光景に、エルはしばし瞬きをして沈黙した。

 この世界が夜に呑まれたのは、ログが、エルの救出に向かう直前の事だったらしい。

 空はとっぷりと暮れ、星も見えない夜空が広がっていた。吹き抜ける冷気を含んだ風も、深夜のそれを思わせた。

「時間が逆転したのでしょう。完成された夢世界ほど、条件に縛られますから」

 一同の無事が確認された後で、説明してくれたホテルマンがそう言った。