目の前に広がる少女と、幼い女の子のやりとりは、夢を見なかったエルが、幼い頃に唯一、時々見る事があった特別な夢だった。家族と死別してからは、一度も見ていない夢だ。エルはオジサンに引き取られてからというもの、彼女との夢を思い出す事もなかった。
名前も知らない、何者であるのか疑問を抱いた事もない。幼いエルにとって、彼女は楽しい話を聞かせてくれて、人形遊びにも付き合ってくれる優しい『お姉さん』で、それ以上の何も必要としていなかった。
けれど、訊いた事もなかった彼女の名前を、今なら言い当てられるような気がした。
エルは緊張しつつも、忘れていた過去の記憶の中の少女を見据えた。脳裏に過ぎった可能性は、決して気のせいではないだろう。何故なら、彼女の顔は、ログに見せられたアリスによく似ているのだ。
「……エリス」
エルは、小さく名を口にしてみた。
不意に、少女がこちらを振り返った。気付くと『小さなエル』はいなくなっており、闇の中には二人しかいなかった。
名前も知らない、何者であるのか疑問を抱いた事もない。幼いエルにとって、彼女は楽しい話を聞かせてくれて、人形遊びにも付き合ってくれる優しい『お姉さん』で、それ以上の何も必要としていなかった。
けれど、訊いた事もなかった彼女の名前を、今なら言い当てられるような気がした。
エルは緊張しつつも、忘れていた過去の記憶の中の少女を見据えた。脳裏に過ぎった可能性は、決して気のせいではないだろう。何故なら、彼女の顔は、ログに見せられたアリスによく似ているのだ。
「……エリス」
エルは、小さく名を口にしてみた。
不意に、少女がこちらを振り返った。気付くと『小さなエル』はいなくなっており、闇の中には二人しかいなかった。