「でもね、私は片割れを持たないまま生まれた不安定な存在だった。こんな私でも『夢守』としての姿を持てて、ある程度の『力』を持たせる事が出来るぐらい、初めて『宿主』になってくれた女の子は、強い力を持っていたのよ」
「きょうだいなの?」
「違うわ。私達『夢人』は、初めての『宿主』の心を写し取って、その夢世界に形造られるの。でも、そうね……『表の子』と『裏の子』であれば、兄弟みたいなものかしらね。私達が、この広い世界で一人ぼっちにならない、唯一の繋がりみたいな相手だから」

 語り掛ける声が弱々しくなり、どこかぼんやりと独り言を続けるような声量になった。

「――『表の子』の不安も悩みも、全て『裏の子』が引き受けて無に返すといわれているの。だから、『夢守』となった子は皆、『宿主』が持つ負の感情の一つも知らないまま、キレイなままでいられるのね」

 聞き手である幼い女の子は、自分の小さな手で遊ばせていた髪が絡まってしまい、なかなか解けず、少し焦りを覚えて「どうしよう」と呟いた。