『理の使者が、殻を持つ事は許されぬ』――『殻は命を宿すモノの領分である』
『殻は精製と創造で命を造り』――『理は根源と狭間を繋いで核を守る』
『お前は、あの時選んだ』
『命持つ者に許された【選択】を、我らは尊重する』

 まるで頭部に心臓が宿ったように、脈打つ痛みがエルを襲った。

 大量に流れ込んでくる情報が、思考回路を圧迫し始め、全身に痛みが回った。あらゆる筋肉が軋み、身体のあらゆる筋肉や内臓、骨を損傷したような痛みは耐え難く、エルは思わず膝をついてしまった。

 ……ああ、そうか。これは、俺の身体が覚えている過去の記憶なんだ。

 複数の人間が重なったようなあの声も、この痛みも、全ては今のエルが覚えていない過去のものだ。彼女は自分が今、過去と現在の光景を、抽象的に見せられている事に気付いた。

 エルは知らず人形を押しのけ、痛みに抗いながら闇の中を進んだ。

 少しでも身体を動かせていなければ、ひどい痛みや眩暈に倒れてしまいそうだった。骨が砕けたように腕が重く痛む。――いつだったか、壊れてしまった彼女の腕を掴んで、もう一度壊してしまった大きな男がいた気がするが、よく思い出せなかった。