「普段のログは、向かってくる人間を片っ端から叩き伏せていただけに、プライドが傷ついちゃったのかなぁ。でも他の部隊にはいたけどねぇ、エル君と同じぐらいの使い手とか……僕らもそろそろいい歳だし、ログも少しは、自分にそう言い訳できるようになって欲しいよね」

 当時は最年少部隊だった全員が、今では三十代中盤になった現実を思い、スウェンは「やれやれ」と溜息を吐いた。

 しばらく森の中を歩き通したが、樹林の出口は見えて来なかった。ボストンバッグで眠っていたクロエが目を覚まし、ボストンバッグから降りて、エルの位置を確認しながら森の中を探索し始めた。

 同じように暇を持て余したホテルマンが、その辺で拾った枝を振り回しながら、調子外れの鼻歌を口にした。

 どれぐらい急ぎ歩いただろうか。

 足に伝わる地響きが遠くなり、一同の足に限界が来た頃合いで、ひとまず小休憩を取る事にし、それぞれが大地に横たわる巨大な根に腰を下ろした。

 深い森は、太古の昔から生存しているように全ての木々が巨大だ。車一台がすっぽりと入ってしまいそうなほど大きな幹を持っており、触れてみると、冷たくて心地良かった。

 エルは、ふと好奇心を覚えて幹に耳を当て、木の中から水の流れる音がする事に気付いた。

「水の音がするよ、ここ」

 すると、スウェンも木の幹に耳を押し当て、「ああ、なるほど」と彼は呟いた。

「飲み水を蓄えてくれる木もあるから、その一種じゃないかな」