「ふむふむ、余裕がない感じが致しますねぇ」
「足の長さとか関係ないからな」

 エルがすかさず言い返すと、ホテルマンはやや拍子抜けしたように「誰もコンプレックスは指摘していないのです……」と頬をかいた。

「そちらの『愛想のない大きなお客様』からも、何かおっしゃってあげて下さい。小さなお客様を、私がおんぶすればいいと思うのですよ」
「黙れ、俺に話しかけるな、殺すぞ」

 ログは一瞥すらくれず、淡々と脅迫の言葉を返した。

 先程、ログはあの建物から飛び降りた際に、エルを担いでいたのだが、地面に降ろした途端に反撃を喰らって機嫌が悪かった。彼はあの時、咄嗟に右腕でエルの蹴りを防いだものの、その直後に彼女の柔軟な身体で繰り出された逆の足からの膝突きを、胸に食らってしまったのだ。

 後方にいるログの、不機嫌極まりない様子を盗み見たスウェンが、セイジに耳打ちした。

「ログったら、防衛しきれなかった事がそんなにショックだったのかな?」
「さぁ……。私達の部隊にも、あそこまで体術に長けた兵士がいなかったせいだろうか?」

 言われて思い至り、スウェンは「なるほど」と肯いた。