無事に高所からの着地に成功した先に広がっていたのは、巨大な樹林だった。

 足場には、苔のはえた大石が不揃いに積み上げられており、太い樹木の根が絡みついていた。上空からの光りは、背丈のある木々の葉に遮られ、僅かな光りが筋となって降り注いでいるばかりだ。

 常に水の流れる音が聞こえており、水気を含んだ地面は足場が悪かった。岩の隙間に空いた窪みには水がたまり、どこかに水源地や、その流れがあるのだろうと思われた。

 こちらからは、山の反対側の海岸で蠢く巨人の様子が確認出来ないでいた。時折、思い出したように地響きが足元を伝わってくるが、ひとたび収まれば辺りには静寂が満ちた。

 ホテルマンは、セキュリティーの一部となった『番人』の感知圏内から、出来るだけ離れる事を助言した。距離が開けば『排除命令』外だと悟り、スウェンは休まず先を急いだ。

 足元に気を付けながら、一同はスウェンの後に続いて先を進んでいた。森に漂う空気は、湿気を含んでひんやりと肌にまとわりつき、暫くもしないうちに全身が汗と湿気で濡れ、体力は確実に消耗した。

 樹林の高さがありすぎて、空は木の葉に隠れてしまっていたが、スウェンは探査機のモニターを確認しながら向かう先を正確に捉え、力強い足取りで皆の前を進んだ。その背中を真っ直ぐ見つめて、セイジが一歩一歩軽快に足を進め、ログは不機嫌この上ない顔で足場を踏み付けて前進する。

 ホテルマンは、一見すると滑りやすそうな革靴にも関わらず、ズボンのポケットに手を突っ込み、軽やかな足取りで皆の後を追っていた。エルは、ボストンバッグを引き寄せ、足を滑らせないよう必死に歩みを進めていた。

「小さなお客様、大丈夫ですか? 尋常じゃない疲弊っぷりですが」
「気のせいだよ。俺は大丈夫だってば、――だから声掛をけるな」