クロエ・ジュニア達は、全て健康で、離乳の時期に貰い手を探して旅立たせた。
猫も犬も、俺には一匹ずつで十分だった。一匹、一匹去ってゆく我が子を、クロエは静かな眼差しで見送った。我が子が一番幸せになれるであろう旅立ちを知ってか、クロエは少しの反抗も見せなかった。

 クロエが三回目の子育てを終えた折り、俺は、彼女の避妊手術を決めた。

 里親探しを手伝ってもらった動物病院の医者に、避妊手術を勧められた事がきっかけだった。病気になりやすいから、今のうちに避妊させておくといい。ずっと元気で生活させてやりたいのであれば、そうするべきだ、と助言された。

 俺自身、いつまで出産の手伝いや、里親探しが出来る身か分からない。だから、俺は少し考えて、クロエの避妊手術に踏み切る事にしたのだ。

 何故なら、俺の身体の中には、既に治る事のない爆弾が潜んでいたからだ。

 クロエの避妊手術が成功した後も、二匹と俺の生活は、変わらず続いた。

 ポタロウは相変わらず落ち着きがなかったが、クロエの方も、気分に応じてポタロウをからかって座敷を走り回る事があった。クロエは避妊手術を行ってから、ずいぶん逞しい元気な猫になったようだ。

 その頃になると、爺さんのサトウキビ畑は、すっかり以前の姿を消してしまった。

 生い茂る雑草が風景に馴染むまでに、時間は掛からなかったと思う。俺とポタロウと、クロエの散歩コースとなった爺さんの畑は、毎年大きな雑草を茂らせ、四季折々の花を付けた。

 大寒波で作物に被害が出たり、大雨で避難勧告が発令されたりとはあったが、強烈な台風で俺の家の屋根の一部が吹っ飛ぶ以上の大きな事件は、数年の間には起こらなかった。珍事件でいえば、野生の猪が部落に迷い込んだ際に、ついでに退治した俺が新聞記事に小さく乗った事と、その件で、俺が村長に感謝状をもらったぐらいだろうか。