他の全員の用意が整ったところで、ログが片方の手で窓枠を掴んだまま、エルに「おい」と言って手を差し出した。

「行くぞ、クソガキ」

 四人の男達の表情は普段通りだったが、どこか楽しそうな気配も滲ませていて、エルは躊躇した。

 男と女の思考の違いは、きっとここで線引かれているのかもしれない。仮想空間という環境であったとしても、ほとんど現実世界と変わらないリスクを持っているエルにとっては、大きな問題であるし……

 本音を言うと、高所から飛び降りる、というのが怖い。

 エルは思わずたじろぎ、スウェンに取られてしまったボストンバッグを、心細い想いで盗み見た。断る術はないのだろうかと、泣きたい気持ちでログへ視線を戻し、最後の悪足掻きのように首を左右に振った。

「や、やっぱり遠慮したいんだけど……その、おんぶとか嫌だし――」
「あ? 誰も背負うなんて言ってねぇだろう」

 問答無用と言わんばかりに、ログが、ぐいとエルの腕を引いた。

「かつぐんだよ」

 彼はそう宣言すると、軽々とエルを俵担ぎした。彼は流れるような動作で窓枠に足を掛け、スウェンへ目配せする。