「そんな事しなくたっていいよ。俺は勝手にやるし、今更、別行動を取ったって特に問題ないでしょう?」
「良くないよ、エル君。今、僕がそう決めたんだ。――いいよね、ログ、セイジ?」
「隊長命令だ。諦めろ、クソガキ」
「まぁ、私の方は特に問題ない」

 スウェンほどホテルマンに苦手意識を覚えていないセイジが、任せてくれて構わないから、とホテルマンの件について簡単に請け負った。エルは、呆気にとられて「えぇ……」とぼやいてしまった。

 状況を見守っていたホテルマンが、「なるほど」と口の中で呟き、口角を小さく引き上げた。

「面白そうですねぇ。では、私は『親切な大きいお客様』に少しの間お世話になるとします」

 ホテルマンは声色の調子を、普段の胡散臭いものに戻すと、遠慮もせずセイジの元へと向かった。

 セイジが窓に足を掛けつつ、ホテルマンの腕を取り、自分の肩に回した。スウェンが、ホテルマンの様子を茫然と見つめているエルに歩み寄り、ボストンバッグを自分の肩に移し替えて、窓へ足を掛けて準備を整えた。