そう感じる俺は、やはり彼を知っているのだろうか。気のせいではなく、どこか遠い昔に、出会った事がある……?
 
 考え込んだ一瞬、エルの脳裏に、幼い自分の手と真っ暗闇の風景を見たが――その思考は、スウェンの軽快な声を前に吹き飛んだ。

「大丈夫だよ。エル君はログが背負えばいいし、そこの君は、セイジがサポートすれば問題ないと思う」
「――は? 背負うって、何?」

 エルは我に返り、思わずログへ目を向けた。スウェンのそれが唐突な提案である事は、ログの眉間に出来た皺で理解出来た。

「ちょっと待って。あいつが俺を背負って、ここから飛び降りるって事……?」

 絶対に無理だ、というか、方法がどうであれ、結果的に飛び降りるのは却下!

 エルは思い付くままに抗議した。そもそも、誰かに背負われて飛び降りるなど、自分で飛び出す以上に恐怖がある。あのログの事だから絶対に嫌がるに違いないし、スウェンは一体何を言い出すのだろうかと思った。