近くにいたセイジが駆け寄り、ホテルマンの隣から階下の状況を確認した。彼は目を剥くと、緊張した様子でスウェンを振り返った。

「下がとんでもない騒ぎになってるッ、さっきの吸血獣だらけだ!」
「ひとまず穴を塞――、ってセイジ前!」

 スウェンが指示するよりも早く、吸血獣が獲物に気付いて穴から跳躍した。反射的にエルは飛び出すと、セイジとホテルマンの後ろに素早く回り込み、飛び出して来た吸血獣の頭に見事な踵落としを決めた。

 エルの強靭な一撃を受けた吸血獣が、梯子を登り始めていた他の吸血獣達を巻き込みながら、階下へと叩きつけられた。

 急なアクシデントに遅いセイジを心配していたスウェンが、「エル君さすがだよ!」と安堵の声を上げ、ログが「ナイスだクソガキ!」と、やけに偉そうな態度で言ってのけた。

 セイジが辺りを見回し、近くにあった座敷の畳みに両指を突き入れた。彼は短い息を吐くと、一気に畳みを持ち上げて昇降口を塞いだ。セイジは、まるでダンボールを担ぐように、畳みを次々と剥がしては運んで重ね、階下へと通じる穴を完全に塞いでしまう。