「今から考えるつもりだったんだよ、僕は」
「はあ、左様でございますか。対策と致しましては、感知されない距離まで行くことですかねぇ」

 その時、海岸をゆっくりと進む二体のマグマの巨人が、ゆっくりとこちらへ顔を向け、目標を定めたように重々しい一歩を踏み出した。エルは「ぴゃ!?」と飛び上がり、思わずスウェンの服の裾を引っ張った。

「うわッ、こっちに向かって来てんだけど!?」
「ちょっと君、なんとか出来ないのかいッ?」
「え~、無理ですぅ。私、解析力はありますが、根はコレなんで」

 ホテルマンが、先程の雰囲気を一転させるよう唇を窄め、指先で小さなハートを描いた。

「黒幕だなんて私の性格では無理です。大きなお客様が、すっとぼけた勘違いをされるから誤解を招くのです」
「お前ッ、絶対に他にも色々と隠してるだろうが!」
「きゃー、怖―い」

 ホテルマンはログの拳を軽々に避けると、棒読みで台詞を言って廊下を走り、――梯子のある穴を覗いたところで、演技ではない「ぎゃーッ」という小声を発した。