「『夢人』というやつかい?」
「いいえ、彼らは特別な『夢』を守る、『番人』と呼ばれる意思のない兵士です。『仮想空間エリス』の影響を受けて、セキュリティーの一部に取り込まれている状態というところですかねぇ。――この世界の『夢人』は、きちんと夢の『核』を持って離脱出来たようですので、あの『番人』達も崩れかけです」

 再度地響きが上がり、バランスを崩し掛けたエルを、セイジが両手で受け止めた。
エルはセイジに手短に礼を告げると、ボストンバッグを確保して身体に引っかけた。

 クロエが駆け寄り、ボストンバッグの中へと身を滑り込ませたところで、彼女はホテルマンの横顔を見つめた。

「ねぇ、『核』って何? そんなに大事な物なの?」
「育てている『夢』の源、といえばいいのでしょうか。『宿主』から、次の『宿主』へ受け継がれるために必要なものです。『核』がなくなってしまえば、その人間の想いや希望に誰も触れる事が出来なくなってしまいます」
「それって、つまりどういうこと?」

 エルが続けて尋ねると、ホテルマンは私情の読めない顔を向けた。