「ようやくマルクの行方を掴んだのは良かったけど、最悪な事に、ある人の一人娘が誘拐されてしまって、僕らは正規ルートで【仮想空間エリス】に潜入する事になった。今回の件については必要な人員がかき集められていて、僕ら以外は、外の世界でそれぞれ頑張っている感じかな」
「今回命じられた任務は、娘の救出と【仮想空間エリス】の完全破壊で、私達はシステムとその母体である『エリス・プログラム』ごと抹消しなければならない」

 日本人風の男が、エルをチラリと見降ろして、遠慮がちにそう告げた。

 ああ、なんだか面倒な事に巻き込まれたな、とエルは粗方の事情を察して苦々しく思った。

「つまりは、そういう事なんだよ」

 とスウェンがセイジの言葉に相槌を打ち、小さく肩を竦めて見せた。

「残念だけど、僕らの計画では、最後のエリアで脱出経路を確保してもらう事になっていて、現時点では、君がここから出られる方法がないんだ。君がどういった状況でここにいるのか今は何も分からないし、しばらくは僕らに付き合ってもらう事になると思う」