吹きこむ風が、少しだけ冷たさを帯び始めた。

 話しに満足したスウェンが背伸びをし、マメなセイジが持ち物の確認に入った。エルは怖い事を忘れる為、クロエと窓の外を眺める事に専念した。

 穏やかな時間が暫く続いたあと、不意に、部屋の静寂をログの一声が破った。

「おい。そろそろ、しらばっくれるのは止めたらどうだ」

 腕を組んで座っていたログが、寝そべるホテルマンを睨み付けた。

 先程まで機嫌が良さそうだったが、何か考える所でもあったのだろうか。エルとクロエは、揃ってスウェンに目配せした。

 スウェンは、ログに少々都合の悪いような表情を向けていた。もうちょっとタイミングを待てなかったのかと眼差しで訴えていたが、エルの視線に気付くと、諦めたように「少し大人同士で話し合わせて?」と唇に人差し指をあてる仕草を返した。

 ねそべったままログへ顔を向けたホテルマンが、「はて」と首を傾げた。

「私、何か致しましたか?」
「腹を割って話していない事があるだろう。お前、どうも胡散臭いぜ」
「顔については度々言われますが、度量が狭いお方ですねぇ」

 ホテルマンは、呆れた顔で上体を起こすと、ログの方を向いて正座した。