「あの、俺はそういうビックリ系は、いらない、かな……」
「え~、意外だなぁ。もしかして恐いの?」
「こッ」

 エルは、思わず声が裏返り、一瞬言葉が詰まった。

「恐いとか、そ、そそんなのある訳ないじゃんッ。ただ、あまり見ないだけで、特に興味もないというか……」

 エルは答えつつ、テレビ放送されていたホラー系、スプラッタ系の映画に怯える様子を、いつもオジサンにからかわれていた過去を思い返した。弱みは出来るだけ知られたくなかった。

 スウェンが、いくつかの代表的なスプラッタ映画の題名を上げ、陽気に話し始めた。エルはテレビで見ている時、目や耳を塞いでいる事が多かったので内容はうろ覚えだったが、不審がられない程度に相槌を打った。

 途中、エルがとうとう言葉を失ってしまうと、セイジが「人間がスライスされる場面の詳細まではいらないからッ」と青い顔で拒否の意を唱えたが、スウェンは、二人に詳しく話し聞かせる事を止めなかった。

 話を聞いていたログの口許が、わずかに笑みを浮かべていた。

 ホテルマンは話の最中に、「ホラー映画なんて怖くありませんよ、小さなお客様!」「私はジンジャーエール派ですね」と少しだけ話に参加したが、映画には基本的に興味がないのか横になってしまい、気だるい至福の時間に寝返りを打ち、腹を座敷ら押し付けて手足をだらしなく伸ばしたりした。