「そこまで煩くはないと思うよ? 映画館は音質が良くて、画面も大きいし、――あ。ホラー物は特に良いよ! 女の子達は大抵、僕の腕にしがみついて来てくれるし」
「それは女の方も計算してんだよ。そういう女が一番うぜぇ」
「それもそれで楽しいって話しだよ、ログ。僕的には、今やってるホラー映画も是非見たいんだよね。悪魔とかゾンビとか色々揃って出てくるし。――エル君は、ホラーとかどう?」

 またしても前触れなく質問されて、エルは、思わず腕の中のクロエを抱き締めた。

「え、あの、お化けとかは、その……ちょっと遠慮したいかな、なんて…………」
「あはははっ、お化けとは違うよ~。悪魔やゾンビだってば」

 その真意を問うように、エルはセイジへと目を向けた。セイジは、エルの視線を受け取めると、「スウェンの求めるホラーは、ちょっとスプラッタかな……」と遠慮がちに意見した。

 エルは嫌な汗を背中に覚え、更にクロエを抱き寄せた。ログは話しに飽きたのか、頭の後ろに両手をやって目を閉じてしまっており、スウェンだけが、エルの返答を期待の眼差しで待っていた。