「いやはや、本日も貴婦人様の美しさには感嘆致します。月の女神様も嫉妬される美しさですよ」
「にゃーん」
クロエは上機嫌だった。ブラツシングを終えた頃合いを見計らって、窓辺に腰かけていたエルが呼ぶと、いつものように隣に来て丸くなった。
オジサンの家で縁側に座っていた時も、クロエはいつも、エルの傍に腰を降ろしていた。思い返すと、初めて出会った時から、クロエはエルから離れようとしなかった。
自分が、母親だと思っているのかもしれんなぁ。
昔、オジサンがエルにそう言った事があった。ポタロウは、基本的に主人と遊び友達の区別しかついていないが、クロエは賢い猫なので、人間の暮らしや言葉も理解したうえで行動しているのだろうと、彼はエルに教えてくれた。
『猫には、複数の魂があるらしい。神様から与えられた特別な奇跡の力で、長く生きるほどに人の言葉を話し、尾の数も増えるって、日本に言い伝えがあるそうだ。クロエは、――どうだろうなぁ。この子は賢いから、きっと、その特別な力を自分の事に使ってまで、長く生きようとはしないんだろうなぁ』
でも、夢物語でもいいのだ。
エルにとって、クロエは賢くて美人な母親猫だった。虫や鳥の捕まえ方を教えてくれたのもクロエで、怒らせた野犬からの逃げ方も、エルは彼女に教わった。
「にゃーん」
クロエは上機嫌だった。ブラツシングを終えた頃合いを見計らって、窓辺に腰かけていたエルが呼ぶと、いつものように隣に来て丸くなった。
オジサンの家で縁側に座っていた時も、クロエはいつも、エルの傍に腰を降ろしていた。思い返すと、初めて出会った時から、クロエはエルから離れようとしなかった。
自分が、母親だと思っているのかもしれんなぁ。
昔、オジサンがエルにそう言った事があった。ポタロウは、基本的に主人と遊び友達の区別しかついていないが、クロエは賢い猫なので、人間の暮らしや言葉も理解したうえで行動しているのだろうと、彼はエルに教えてくれた。
『猫には、複数の魂があるらしい。神様から与えられた特別な奇跡の力で、長く生きるほどに人の言葉を話し、尾の数も増えるって、日本に言い伝えがあるそうだ。クロエは、――どうだろうなぁ。この子は賢いから、きっと、その特別な力を自分の事に使ってまで、長く生きようとはしないんだろうなぁ』
でも、夢物語でもいいのだ。
エルにとって、クロエは賢くて美人な母親猫だった。虫や鳥の捕まえ方を教えてくれたのもクロエで、怒らせた野犬からの逃げ方も、エルは彼女に教わった。