西側の座敷部屋に戻ると、ホテルマンが正座して一同を待っていた。方々好きな場所に腰を落ち着けたところで、下の店で買った食糧で腹ごしらえをする事になった。

 座敷の中央に並べられた食料品は、たこ焼きにお好み焼き、鯛焼きといった日本文化の物だったが、欧米人一行も満足出来ようだった。沖縄に住んで長い事もあり、納豆や漬物以外は食べ慣れているのだという。

「私は出来れば、妻の作ったパスタ料理があれば、とは思う」

 セイジは愛妻家であるらしい。はにかんだ表情からは純情さが窺えて、エルは思わず「良い人過ぎる」と畳の上に拳を押し当て、金や権力にしか眼中のないホテルマンが「私はなんて悪人なんだ」と苦悶し呻いた。

 その様子を見ていたログが「お前ら、阿呆じゃねぇのか」と一言呟いた。

 食事はつつがなく進んだ。クロエは、缶詰の柔らかいご飯をいつも以上に食べ、ミルクも残さず飲みきった。ホテルマンが、風呂敷から取り出した小道具で、クロエをブラッシングした。