「ったく、緊張感のねぇ野郎だな……」
「まぁまぁ、落ち着きなよ。――あ、裏手は崖になってるんだね」

 足早に反対側の座敷部屋に向かったスウェンが、そう確認するなり、「おいでよ」とエル達を呼んだ。

 エル達は、海の見える西側の部屋にホテルマンを残し、東側の部屋に移って、スウェンの隣から大きな窓の下を見降ろしてみた。建物が断崖絶壁に沿って建てられている様子が見て取れて、数十メートル下降には、生い茂った樹林だけが鬱蒼と広がっていた。

 上空へ目を向けると、北東の空に、空へと伸びる透明感のあるアクア・ブルーの帯が見えた。

 どうやら目的の近くまで近づいているようだが、そのまま崖を下る手段はない。ログが「回らないと無理だな」と告げると、スウェンが「まぁね」とそれを認めて肩をすくめた。

「一旦ここを出て、迂回するしかないだろうね」

 探査機が問題なく稼働する事を確かめたスウェンが、支柱のある場所が、ホテルマンが言っていた駅の方角で間違いなさそうだと確認し、「無事に一階まで辿りつけるといいけれど……」と溜息混じりにぼやいた。