エルは脇に退くと、ホテルマンに手を差し出した。
「さっきは蹴ったりして、ごめん。とりあえず仲直りしよう」
すると、ホテルマンが既視感を思わせる顔で、しばし動きを止めた。
彼は長らく時間を置いて「――はい」と答えると、差し出されたエルの手を取った。ホテルマンは立ち上がると、尻の辺りについた砂利を払い、エルのコートの下裾に付いた砂利に気付いて、丁寧に払い落した。
階段の下で再び全員が揃ったところで、セイジがエルの無事を確認して、ぎこちなく微笑んだ。ふと、ホテルマンが、ログの濡れている頭に目を止めて首を捻った。
「あらら、どうして濡れているのですか、大きなお客様」
「……スウェンに水をひっかけられた。頭を冷やせ、だとさ」
エルが問うように目を向けると、スウェンが無言でにっこりと微笑んだ。
あ、目が笑ってない。マジで怒ったんだ……
「ふははははっ、それは災難でしたねぇ。任せて下さい、私が拭いて差し上げましょう!」
仕方がないですね、とホテルマンがどこか機嫌良く告げ、風呂敷から白いタオルを取り出した。
しかし、頭を拭こうとしたホテルマンの手首を、ログが素早く掴んで拒んだ。
「触られんのは嫌いなんだ。自分でやる」
今までにない殺気をまとわせたログが、そう牽制してタオルだけを受け取った。
黒い笑みを浮かべていたスウェンが、ふっと困ったように微笑み、エル達に眼差しで「ごめんね」と伝え、聞かないで上げてと言うように首を小さく横に振って見せた。
恐らく彼なりに事情があるのだろうと察して、エルとホテルマンは顔を見合わせ、肩をすくめた。ボストンバッグから顔を覗かせていたクロエが、静かな眼差しでログを見つめていた。
「さっきは蹴ったりして、ごめん。とりあえず仲直りしよう」
すると、ホテルマンが既視感を思わせる顔で、しばし動きを止めた。
彼は長らく時間を置いて「――はい」と答えると、差し出されたエルの手を取った。ホテルマンは立ち上がると、尻の辺りについた砂利を払い、エルのコートの下裾に付いた砂利に気付いて、丁寧に払い落した。
階段の下で再び全員が揃ったところで、セイジがエルの無事を確認して、ぎこちなく微笑んだ。ふと、ホテルマンが、ログの濡れている頭に目を止めて首を捻った。
「あらら、どうして濡れているのですか、大きなお客様」
「……スウェンに水をひっかけられた。頭を冷やせ、だとさ」
エルが問うように目を向けると、スウェンが無言でにっこりと微笑んだ。
あ、目が笑ってない。マジで怒ったんだ……
「ふははははっ、それは災難でしたねぇ。任せて下さい、私が拭いて差し上げましょう!」
仕方がないですね、とホテルマンがどこか機嫌良く告げ、風呂敷から白いタオルを取り出した。
しかし、頭を拭こうとしたホテルマンの手首を、ログが素早く掴んで拒んだ。
「触られんのは嫌いなんだ。自分でやる」
今までにない殺気をまとわせたログが、そう牽制してタオルだけを受け取った。
黒い笑みを浮かべていたスウェンが、ふっと困ったように微笑み、エル達に眼差しで「ごめんね」と伝え、聞かないで上げてと言うように首を小さく横に振って見せた。
恐らく彼なりに事情があるのだろうと察して、エルとホテルマンは顔を見合わせ、肩をすくめた。ボストンバッグから顔を覗かせていたクロエが、静かな眼差しでログを見つめていた。