セイジが差し向けた指の先には、確かにホテルマンがいた。ホテルマンは、村の中心を通る階段を、少し登った先にあった髪飾りが並べられた出店の前におり、彼は鼻の下を伸ばして、女性店員に話しかけていた。

「私、こう見えてもアロマ・オイルの販売も行っておりまして、どうです? 高く買い取って頂けませんか?」
「あらやだ、どうしましょう。うちは髪飾り専売なんですよ」
「ホテルの一級品ですよ。なんなら、試しに塗らせて頂けませんか?」

 ホテルマンが凛々しい物言いでそう言い、女性店員の手に触れようとした直前、――高い身体能力を活かしたエルのドロップキックが、彼の脇腹に炸裂した。

 豪快な音と共に、ホテルマンの身体が飛び、二メートルも先の階段へ突っ込んだ。

 先程まで女性店員をくどいていた彼は、倒れ込むや否や、激しく咳こんで仰向けになったが、エルはその腹部に問答無用で両足を置いて仁王立ちし、ギロリと睨み下ろした。