村人達は、どれも簡易シャツと編まれたズボンを着用していた。着物のような薄い羽織り姿の者も目立った。顔立ちは中国系から日系の範囲内で、髪と目は共に黒い。

 村の中央には、木材を重ね合わせた長い階段が敷かれていた。伸びる階段の左右には、別の細い通路が造られ、そこには手作り感漂う店が、隙間なく立ち並んでいる。

 情報収集を担当するセイジが、スウェンに目配せされる事もなく動き、近くにいた村人らしき男に尋ねた。

「ここは、一体どういう所なんですか?」
「あんたら旅人か? ここは市場だよ。満月の夜から二週間だけ、各商人が立ち寄って店を出す所さ。一等地は、あの天辺に見える建物だな。あの建物の上の方が、客人向けの宿になっていて、俺たちは売買が終わるまで、そこで寝泊まりしているんだ」

 長く伸びる階段の先には、木材質の大きな建物が鎮座していた。和風の鳥居をモチーフにされた入口が開かれ、何人もの人間が忙しなく出入りしている。浴衣を着た女性や、スリットの入ったチャイナ服の女性もおり、ログとスウェンが関心した声を揃って上げた。

「なかなかだね」
「ああ、なかなかだ」

 すると、先程セイジが尋ねた男が、目尻を下げて二人に耳打ちした。