別の人間の影にいた吸血獣達も立ち上がり、耳障りな甲高い声を上げた。道の左右から同じ姿をした吸血獣がぞろぞろと数をなし、兎のような長い足でぎこちなく歩き出て来た。そのうちの一匹が、尾を振り上げて地面を打ちつけ、鈍りを落としたような音を上げた。

「……なるほど、主に後ろ足と尻尾が発達しているわけか」

 スウェンがそう言って目配せし、素早くロケットランチャーを構えたタイミングで、全員一斉に駆け出した。

 突っ込んで来た人間に反応し、吸血獣も一斉に飛びかかって来た。吸血獣達は跳躍すると、次々にミサイルのように突進し、スウェンの前方を固めたログとセイジが、銃とライフルで応戦し道を切り開いた。

 どこから湧き出しているのか、吸血獣の数は一気に膨れ上がった。

 セイジが持つ、ライフルの先端に吸血獣が噛み付いた。顔の半分以上が口かと思えるほど大きな噛み口に驚異しながら、セイジが反射的にライフルの先端部分で振り払う。頑丈なのは口許だけなのか、吸血獣は地面に叩きつけられると、大きな頭を支える細い骨が砕かれて痙攣を起こした。

 ログは、飛びかかって来る吸血獣を躊躇なく撃ち続けた。弾が吸血獣の腹部に命中すると、まるで水風船が破裂するように血が噴き出す。獲物を喰い損ねていたらしい吸血獣は、腹が膨れておらず、動きは素早いが撃ってもわずかな血さえ出なかった。

 エルは、ボストンバッグのチャックをしっかり締めて、皆に後れを取らないよう走った。脇から飛び出す吸血獣に気付くと、走り込んだまま地面を蹴り上げて足を大きく振るい、飛びかかって来た四匹の吸血獣をまとめて蹴り飛ばした。空中で進行方向へと身体の向きを変えつつ、別方向から飛び込んで来た吸血獣を蹴り上げ、落ちてきたところを叩き潰した。